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2024年4月25日

第一回対談 “バスとインバウンドの未来図” 京王電鉄バス 福島八束取締役

バスターミナル東京八重洲

バス業界のキーパンソンと当社代表・高橋英知が「バス業界のこれまで、これから」を語り合うコーナー。

1回目は、インバウンド市場への取り組みについてお話を聞くため、東京の2大高速バスターミナルで開業を陣頭指揮した京王電鉄バスの福島取締役を、2022年9月に開業した「バスターミナル東京八重洲」に訪ねました。

<本日のキーパーソン>

京王電鉄バス株式会社 取締役事業部長 福島八束 様

  • <対談のポイント>
  • ・「バスターミナル東京八重洲」の外国人対応
  • ・京王電鉄バスのFIT集客の取り組み
  • ・なぜ? 地味な停留所でタイ人の利用が急増
  • ・「バスターミナル東京八重洲」拡張計画と新規路線受け入れ方針

やがては国内最大級に

高橋:本日はお忙しい中、ありがとうございます。バスターミナル東京八重洲(通称:BTY)は、従来のバスターミナルの印象を払拭するシックな雰囲気ですね。福島さんにとっては、新宿高速バスターミナル(バスタ新宿)に続く開業プロジェクトでした。

福島取締役事業部長(以後、敬称略):ありがとうございます。バスタ新宿では、運営会社(新宿高速バスターミナル㈱)に出向し取締役として開業準備を担い、初代の所長を務めました。一方、BTYは、整備主体であるUR都市機構さんから京王電鉄バスが運営事業者として選定いただきました。BTYは現在、6バースで一日あたり約600便を発着させています。2年後に第二期、5年後に第三期開業を終えると、20バースを揃え高速バスターミナルとしては国内最大級になる予定です。

高橋:バスタ新宿との違いはありますか?

福島:乗り入れ路線の構成が、バスタ新宿は予約制路線中心、BTYは短距離で通勤客中心の路線も多いかという違いがあり、お客様の滞留時間などに差はあります。でも、バスが事故なく発着しお客様をわかりやすくご案内するという本質は変わりません。

高橋:木更津や酒々井(ともに千葉県)のアウトレット行きに海外のお客様が並んでいる様子でした。対応は大変ですか?

福島:アウトレット線はほとんどが外国の方で、満席が続いて運行会社に電話して臨時便を仕立ててもらうこともあります。スタッフには業務用スマホを持たせ、翻訳アプリを活用しています。非英語圏のお客様は、むしろ向こうから翻訳アプリで質問なさるので、それに日本語で答えていますね。

高橋:非英語の対応も実は大きな課題ですよね。

外国の方の乗車が多い三井アウトレットパーク木更津行き
外国人向けの案内ボードを活用

インバウンド対応。最初は手探りだった

福島:オーエイチさんとの関係は、私が高速バス担当の課長だったころからだから、もう10数年ですね。当社は新宿~富士五湖・富士山五合目線を運行し、インバウンドという言葉が定着する前からある程度は外国人のお客様はいたわけです。ところが国の政策もあって対応に迫られて、最初はどうしたらよいかもわからなかった。

高橋:はい。現場とウェブの両方を同時にサポートさせていただきました。バスターミナルでは、その現場に特化した英語マニュアルを作りました。「地下鉄〇線は右側の階段を降りて…」。現場でそのまま使える会話の研修会が好評でした。ウェブは、まず予約システムを英語に対応してもらいましたが、課題はさらなる集客でした。当時は富士五湖すらまだまだ、外国人にとってはマイナーで、富士山を見るなら「箱根」。河口湖に行くにしても電車が中心の時代でした。

そこで外国語でGoogle検索した際にも上位表示されるよう、多言語で外国人向けの情報ページも充実させました。

福島:座席管理システム「SRS」や予約サイト「ハイウェイバスドットコム」を自社で運営しているのが当社の特徴です。

高橋:はい。英・中・韓国語に加え、タイ語での予約にも早めに対応してもらいました。

福島:最初は「えっ、タイ語?」でした(笑)。外国語サイトのアクセスレポートを見せてもらい、納得しました。

高橋:当社は宿泊施設の外国人向けマーケティングもお手伝いしています。宿はパスポートを確認するので宿泊者の国籍を把握しており、その当時FITは東南アジア、特にタイが伸びると実感していました。タイ人の影響力の一例です。

高速道路上の目立たない停留所「中央道下吉田」が、今や人気のバス停になりました。 それは「富士山、桜、五重塔(忠霊塔)を一望できるスポット」として有名になった新倉山浅間公園(山梨県)まで徒歩15分に位置している為です。この場所は最初タイ人の間で評判となり、今では、多くの海外からのお客様を中心に公園までの階段に行列ができ、大勢の警備員さんが立っています。

富士山を一望できる新倉山浅間公園
外国人が殺到して写真をとるスポットに

今後はウェブ予約の便利さがカギに

高橋:SRS/ハイウェイバスドットコム」導入路線も全国に広がりましたね。

福島:はい。1980年に自社路線用に開発したのが「SRS」の始まりですが、現在では名鉄バス様、西日本鉄道様をはじめ約50社の高速バスに導入いただいています。白川郷(岐阜県)などFITに人気の路線も多くあります。

高橋:「ハイウェイバスドットコム」外国語ページの改修を重ねていただいたのが結果につながっています。予約にしやすさだけでなく、外国語の観光案内サイトや宿泊施設のサイトから特定の路線のページに直接リンクを貼れるなど、あらかじめ集客面にも配慮した仕様が強みですね。

福島:観光地の宿泊施設さんからのリンクは、共同運行先のおかげです。共同運行先やオーエイチさんに協力してもらい、白馬(長野県)や高山(岐阜県)で宿泊施設さん向けの無料セミナーを開催し、その場で高速バスの告知をお願いしたりしましたね。

高橋:一人のユーザーとしては、「ハイウェイバスドットコム」のユーザビリティは明らかに優れています。今後はウェブ予約の集客力は使いやすさが事業の成否のカギを握ります。

バスターミナル全面開業に向けて

バスターミナル東京八重洲 外観

福島:お話ししたとおり、BTYはこれから2度の拡張を経て完成に至ります。バスタ新宿などで培った運営ノウハウを元に開発した車両管制・旅客案内システムを活用し、安全かつ効率的な運営に努めます。

高橋:デジタルサイネージや自動案内放送も外国語に対応していますね。

福島:路線や便によって対応言語数を変えられるようシステムを構築しました。アウトレット線だけ中国語の放送を追加するとか。

デジタルサイネージでの多言語案内

高橋:非英語の翻訳の精度も重要です。自動翻訳でもほぼ大丈夫ですが、「〇号」などのバス用語や、固有名詞(地名、社名)はネイティブスピーカーでないと判断できません。BTY開業前も、一部ではございますが外国語自動放送の原稿を当社の外国人スタッフが確認させてもらいました。今後、全面開業に向け路線数も増えるんでしょうか。

福島:はい。なにしろ東京駅から直接アプローチでき、空調完備の待合ロビーを持つターミナルです。東京の玄関口として、高速バスはもちろん、外国人向けを含む定期観光バスの運行会社、あるいはツアーを企画する旅行会社の皆様にも積極的にご提案していきます。外国人対応はますます重要なので頼りにしています。

高橋:今後とも貢献するよう努めます。本日はありがとうございました。

各社のインバウンド等の対応事例をインタビュー取材した記事。 4回程度/年(4月・7月・10月・1月 発行予定)