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2024年7月30日

第二回対談 【ネット時代に、なぜ今、冊子なのか、更に、新しいお客さんの創出の為のチャレンジとは】 東急バス

東急バス 和田様(左) 中山様(右)

インバウンド向けに高速バスの案内や時刻表をメインとした渋谷のガイドの冊子を作ったり、新たな停留所や路線戦略を積極的に行い需要を作り出すことに成功している東急バスの和田様、中山様にお話を聞きに東急バス本社にお伺いしました。 

株式会社オーエイチ 高橋(以下、高橋): この度は、ご多忙の中インタビューを引き受けてくださり、誠にありがとうございます。今回、外国人向けの高速バスと渋谷ガイドの冊子制作と新たな停留所や新路線戦略にチャレンジしている背景などをお聞きしたくお邪魔しました。
よろしくお願いします。

ネット時代の今、なぜ冊子なのか?

まずは、この春改定して発行した「外国人向けの高速バスと渋谷ガイドの冊子」についてお聞かせください。WEBやSNS全盛期の今、あえてコストと手間が掛かる冊子を発行しようとなったのはなぜでしょうか?

東急バス株式会社 運輸事業部 計画部 高速貸切グループ 課長代理 和田俊様 

東急バス 和田様(以後、敬称略):元々はコロナ禍前に計画して実施していました。
2018年〜19年にかけて、GoogleリスティングやSNS広告などのWEB戦略も実施はしていましたが、当時はまだ効果が未知数でした。また、日本に来てから選ぶ選択肢もあるのでは?と考えていました。

それなら、既に渋谷にいる人に情報を届けるなら紙の高速バス案内や時刻表があっても良いのでは?と考えていました。

また、渋谷は高低差がある立体的で複雑な街で、バスターミナルもマークシティやフクラス等が複数あって分かり難い事が課題でした。

高橋:確かに、マークシティの5階にバスターミナルって想像も付かないですよね。

和田:渋谷には東急グループのホテルがあるのも大きかったですね。
ホテルに居る外国人に高速バス情報を届けよう。折角ならホテルのスタッフが道案内の際に便利に使えるようにしよう。外国人でも渋谷を迷わず歩けるようにしよう。となりました。

そこで、インバウンドならオーエイチさんだと思いお声掛けて作成いたしました。

高橋:その節は、ありがとうございました。

和田:ただ、完成して、そうこうしていたらコロナ禍が始まってしまい一時中断となってしまいました。
それから、2022年の10月頃からようやくコロナ禍の水際対策が緩和されだして、再出発となりました。

東急バス株式会社 運輸事業部 計画部 高速貸切グループ 中山ありさ様

東急バス 中山様(以後、敬称略):そこから徐々にインバウンドも戻りだし、海外のお客様も増えだしたので、やはり英語の時刻表があった方が案内しやすいなぁと思いました。

和田:バス会社のホームページって外国人が正しく使うのが難しくて・・・
ハイウェイバスドットコムや発車オーライネット、Japan Bus Lineなどなど、路線毎に予約システムやサイトが異なるので正しく辿り着くのが難しいんです。

また、日本人は東急バスや京王バスなどある程度は分かりますが、海外のお客様からすると、恐らく全て「バス」で会社が違うなんて分からないですよね。

そこで、やっぱりホームページを補う英語版時刻表を作ろうとなりました。

外国人向けの高速バス時刻表と渋谷ガイドの冊子
(※外国の方が、日本人に見せてもわかりやすいように日本語を併記する工夫も)

バス乗り場周辺の係員や観光案内所にスタッフに聞く人も沢山居るので、基本情報だけでなくモデルコースなど遊びの要素を入れてオーエイチさんに作ってもらいました。

また、英語版は日本人用より印刷部数が少なくて良いのも決め手でしたね。

中山:発行後、現在までに掲載している一部の路線で運行ダイヤ・運賃が変更になり、このあともダイヤ改正の予定がございますので、秋頃には、この冊子も改定して増刷しようと考えています。
やはり、ネットは大切ですが、ネット以外のツールが一つは必要と考えています。

新しいお客様の創出の為のチャレンジ

高橋:ネット以外の戦略と言えば、
お客様の少ない時間帯の河口湖行きを御殿場アウトレットモール経由にして、新しいお客様を創出したり、室堂までの直通バスSHIBUYA STREET RIDE(SSRIDE)を新設したりされてますね。

和田:根底には東急グループの一員として、東急沿線の価値向上と言う意識があり、その中で私達は沿線の人が郊外や旅行に行きやすくするのが役割だと考えています。

また、今でこそインバウンドで混雑する河口湖線もコロナ禍で伸び悩んでいました。早朝の便は富士急ハイランドや河口湖に行くお客様で賑わうのですが、その後、お客様が少なくなる便があったんですよ。

そこで、河口湖に向かう途中にある、アウトレットによったら丁度良い時間だなぁと思って、共同運行先にお声を掛けさせていただきました。

高橋:停車場所を増やして、ルートを変更するのは大変では?

和田:そうですね、共同運行先の各社さんのご協力お陰で比較的スムーズに実現出来ました。

さらに、運行開始したら直ぐに効果がでました!

当時はインバウンドではなく沿線の主婦層の方々の利用が中心で、新たな需要を掘り起こし、沿線の価値向上ができたと感じています。

そこにインバウンドが戻って来て、ちょうどストンとはまった感じですね。

高橋:コロナ禍に仕掛けて、沿線の日本人に浸透して、コロナ禍後に外国人にもうまくはまった事例ですね。バス停や時刻表が変えることで、収益性も大幅に変わっていく、高速バスのマーケティングは面白いですね。

SSRIDEはどのような経緯で生まれたのですか?

中山SSRIDEはコロナ禍前から構想はあって、渋谷への来街はあるものの滞在時間は短く、もっと渋谷の街を楽しんでもらいたいという東急グループとしての想いから立ち上がったものとなります。

オープントップバスという普段乗らないタイプのバスで街を紹介しながら巡り、降りた後にも街歩きを楽しんでもらえるようにデジタルガイドも制作したいなど、思案していたら、コロナ禍が始まってしまい・・・

コロナ禍が落ち着き2023年3月にようやく開始できました。4月の東急歌舞伎町タワーオープンに合わせて、渋谷新宿コースも開始しています。
また、現在は渋谷の目玉施設のひとつでもある「SHIBUYA SKY」へ入場できるセット券の取扱いも行っています。

SHIBUYA STREET RIDE(SSRIDE)

高橋

その新しいお客さまを創出する為のチャレンジが室堂線のような面白い路線をも生み出したのですね。
私はバス会社さんの中では東急さんは新たなチャレンジをする社風があると感じていました。

和田:室堂線は上高地線が好調だったのが大きいですね。

中山:次の山だ!となりましたね(笑)

和田:上高地以上にニッチな市場にはなりますが、もっとガチな山登り勢がいるのでは?と思い共同運行先になる各社にお声掛けしました。

高橋:関東の人からするとアルペンルートは扇沢から行くのが長年の常識だったので、室堂から逆回りは斬新に感じました。さらに、アルペンルートのケーブルカーやロープウェイも逆回りなら混雑が少ないんじゃないかなぁ、と思いました。

和田:室堂線の魅力は室堂に7:00に到着する事です。恐らく富山駅からでもこの時間には到着出来ないので、何よりも早朝の到着となると思いますよ。

高橋:立山登山する人には最高ですね。 登山は早い出発が重要ですからねぇ。

中山:室堂線は根強いお客様が居ると感じます。 今年はいつから開始するの?っとお客様から問合せが多かったです。

高橋:アルペンルートは今や台湾人やタイ人などのアジアのツーリストに人気ですし、そこに立山に登る方にも魅力的な路線ですね。今後が楽しみです。

今後の課題や戦略はありますか?

和田:空港線ですね。 私たちの拠点である渋谷は外国人にとって遊びに来るところではあるのですが、ホテルが少ないので滞在するところのイメージが弱いんです。

滞在場所としての情報や提案を発信して渋谷の滞在者を増やすことを行いたいと思ってます。

高橋:そうですね、多くの場合でバスは目的ではなく手段なので、バスを利用する理由をお客様目線で発信することは大切ですね。

和田様、中山様 本日は、貴重な時間をいただきありがとうございました。
今後とも、貴社のお役にたてるように貢献するよう努めます。
本日はありがとうございました。

各社のインバウンド等の対応事例をインタビュー取材した記事。 4回程度/年発行予定